相続した不動産の売却と税金対策
相続した不動産の売却と税金対策
日本では、少子高齢化に伴って相続件数が増加し、不動産の相続も年々増えています。親が住んでいた家を相続したものの、住む予定がなく売却を検討するケースも多く見られます。その際、気をつけなければならないのが「税金」と「制度の活用」です。
本記事では、相続した不動産を売却する際に発生する税金と、税負担を軽減する具体的な特例制度について、特に「相続空き家の3,000万円特別控除」を耐震基準別に分けて詳しく解説します。
1. 不動産相続の基本手続き
不動産相続の流れ
- 遺産分割協議書の作成(相続人が複数の場合)
- 法務局で相続登記を行う
- 必要に応じて測量・境界確定
- 不動産会社に依頼して売却活動開始
2. 売却時にかかる税金
譲渡所得 = 売却額 −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:原則は被相続人が購入した価格。不明な場合は概算(売却額の5%)
- 譲渡費用:仲介手数料、測量費用、解体費用など
所有期間による税率
- 短期(5年以下):39.63%
- 長期(5年超):20.315%
3. 税負担を減らすための特例
特例1:相続空き家の3,000万円特別控除
一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
ポイント:建物の耐震基準(旧耐震 or 新耐震)によって必要な対応が異なります。
旧耐震基準の建物(昭和56年5月31日以前)
- 建物を解体して更地で売却、または
- 耐震リフォームを実施し、新耐震基準に適合させる
- 証明書(解体証明または耐震適合証明)の提出が必要
新耐震基準の建物(昭和56年6月1日以降)
- 建物付きのまま売却可能
- 建築確認済証や検査済証などの書類で証明が必要
適用の共通条件
- 被相続人が一人で居住していた住宅
- 相続開始から3年以内に売却
- 売却価格1億円以下
- 相続人や他者が居住・賃貸・事業利用していない
耐震基準の違いまとめ表
比較項目 | 旧耐震 | 新耐震 |
---|---|---|
建物付き売却 | 不可(解体または改修) | 可能(証明書提出) |
必要な対応 | 解体 or 耐震改修 | 建築確認書などの証明 |
費用負担 | 数十万円〜 | 低コスト |
制度の使いやすさ | やや高いハードル | 比較的容易 |
特例2:取得費加算の特例
相続税を支払っていれば、相続から3年10ヶ月以内の売却で取得費に加算できます。
その他の節税テクニック
- 土地を分筆し複数年に分けて売却
- 共有名義の活用
- 譲渡損失の繰越控除や損益通算
4. 売却以外の選択肢
- 賃貸運用
- 自己利用
- 保有しつつ市場を見て判断
5. 専門家との連携
- 税理士(税務申告・特例判断)
- 司法書士(登記)
- 不動産会社(売却戦略)
- 建築士(耐震証明)
まとめ
相続した不動産の売却では、制度を活用することで大きな節税効果が得られます。特に「3,000万円控除」は非常に有効ですが、耐震基準によって条件が変わるため、事前の確認と準備が大切です。
正しい知識と専門家の力を活用して、損をしない売却を実現しましょう。