売れない不動産に潜む“心のすれ違い”
売れない不動産に潜む“心のすれ違い”――売主と買主の想い、そして仲介会社の役割
不動産売買とは、単なる「ものの売り買い」ではありません。売主にとっては長年住み慣れた家や土地を手放す決断であり、買主にとっては人生の新たなステージへの第一歩となる場所を選ぶ行為です。
その分、売主と買主の「価値観」や「想い」にはしばしば大きなギャップが生まれ、それが「売れない不動産」の原因となります。では、どうすればこのすれ違いを乗り越え、売買を成立させられるのでしょうか。
売主の想い:「この家には価値がある」
売主にとって、自身の物件は単なる資産ではなく、人生の一部です。
- 新築時には多額の費用をかけた
- リフォームもして大切に使ってきた
- 静かで環境も良い、理想的な立地だ
こうした感情が、「できるだけ高く売りたい」「納得いく価格でなければ売りたくない」といった思いにつながり、時に市場価格とのズレを生みます。
買主の視点:「価格と条件のバランスが最優先」
買主は主観よりも客観性、つまり「価格と条件のバランス」で物件を判断します。
- 築年数のわりに価格が高すぎる
- 間取りが古く、リフォーム前提なのに価格が強気
- 立地と価格が見合っていない
このように、売主の「価値観」が買主には響かないことが多く、ここに深いギャップが生じます。
双方が見ている“価値”は違う
売主と買主は、同じ物件を見ていながら全く異なる視点で評価します。
- 売主:過去の価値や感情を重視
- 買主:将来の価値や比較による合理性を重視
この違いが、売却の足を引っ張る大きな要因となっています。
仲介会社の本当の役割――“翻訳者”であり、“調整役”である
ここで重要なのが、仲介会社の存在です。仲介会社の役割は、ただ物件情報をやり取りすることではありません。
仲介会社は、
- 売主に対しては、感情に偏らない「市場価格」の提案
- 買主に対しては、物件の背景や魅力を的確に説明
- 双方の納得を引き出す条件調整と交渉
まさに「感情」と「現実」をつなぐ“翻訳者”であり、売主と買主の歩み寄りを促す「調整役」としての力が問われます。
売買成立の本質:売主も買主も「納得」してはじめて契約が結ばれる
不動産売買において契約が成立するのは、売主が「この価格でなら手放せる」と思い、買主が「この条件なら買いたい」と納得したときだけです。
どちらか一方の無理な譲歩だけでは、トラブルやキャンセルのリスクも高まります。だからこそ仲介会社には、双方の意見をくみ取りながら、冷静かつ誠実に「落としどころ」を導く役割が求められます。
売れない物件の多くは、“調整不足”が原因
市場で売れ残っている物件の多くは、価格の問題だけでなく、「売主・買主間の調整不足」が背景にあります。
- 希望価格が相場からかけ離れている
- 買主に対する情報提供が不十分
- 柔軟な交渉姿勢が見られない
こうした状況を打破するのが、仲介会社の「調整力」です。
まとめ:感情と現実の“翻訳者”こそが、売買成功のカギ
「売れない不動産」の多くは、単なる物件条件の問題ではなく、「売主と買主の気持ちの距離」が原因です。
その距離を埋め、双方が納得する形で売買を成立させるには、仲介会社の役割が不可欠です。丁寧な説明、冷静な価格設定、誠実な交渉――そのすべてが、不動産取引を“成功”へ導くカギとなります。
不動産売買は「人と人との納得の取引」である――その本質を忘れずに、誠実な仲介を行うことが、売れない不動産を動かす唯一の方法なのです。