相続不動産は“早く・安く”売った方が得?
相続不動産は“早く・安く”売った方が得?
税金優遇を最大限活用するための合理的判断
相続した不動産を「高く売るか」「早く売るか」で悩まれる方は非常に多いものです。 中には「せっかく親が残してくれたものだから」「もう少し価格が上がるのを待とう」と考えて、売却を後回しにしてしまう方もいます。
しかし、相続不動産の売却には“税金優遇”という期限付きの大きなメリットが存在します。 この制度を活かせば、たとえ市場価格より多少安く売却しても、結果的には「手取り額が多くなる」というケースも少なくありません。
1. 相続不動産にかかる3つの税金
相続した不動産を売却する際に関係してくる主な税金は以下の3つです。
- 相続税:相続財産に対してかかる税金。相続発生から10ヶ月以内に申告・納付が必要。
- 譲渡所得税:不動産を売却した際の利益(譲渡所得)にかかる税金。
- 住民税・復興特別所得税:譲渡所得に連動してかかる。
中でも重要なのが譲渡所得税です。取得費が不明な場合、思わぬ高額課税が発生することもあります。
2. 税金優遇「取得費加算の特例」とは?
相続不動産の売却には、「取得費加算の特例」と呼ばれる税制優遇があります。これは、 相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。
譲渡所得が少なく計算され、譲渡所得税が大幅に軽減されます。以下はその簡単な例です。
・相続税として500万円納付
・取得費不明のため概算150万円(5%)
・売却価格:3,000万円
通常:
3,000万円 - 150万円 = 2,850万円の譲渡所得 → 税金 約850万円
特例適用後:
3,000万円 - (150万+500万)= 2,350万円 → 税金 約700万円
→ 約150万円の節税効果
3. 「取得費加算の特例」は3年以内に売却が条件
この特例は相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から3年以内に売却した場合に限り適用されます。
この期限を過ぎると特例は無効となり、納めた相続税は取得費に反映されません。つまり、節税チャンスを逃すことになります。
4. 値下げしてでも早く売るべき理由
不動産は「高く売りたい」が当然の心理。しかし、3年以内に売れなければ、節税額が消え、手取りが大きく下がります。
100〜300万円値下げしてでも、特例期間内に売却した方が、最終的な手取りが多くなる可能性が高いのです。
- 相場よりやや安めの価格設定
- 複数業者への依頼(一般媒介)
- 内覧や広告への積極協力
5. 空き家の3,000万円特別控除も併用可能
さらに、被相続人の住まいだった空き家に関しては、条件を満たせば最大3,000万円の譲渡所得控除も使えます。
こちらも期間・建物の条件など複雑なルールがあるため、事前に専門家への相談が重要です。
6. まとめ:相続不動産は“期限”との戦い
相続不動産は「大切な家を高く売りたい」と思う反面、税制優遇には明確な期限があるため、冷静な判断が必要です。
相続不動産を所有されている方は、ぜひ一度「早めの売却」を前提にシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。