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相続不動産は“早く・安く”売った方が得?

不動産売却

矢野

筆者 矢野

不動産キャリア4年

経歴:金融機関出身で17年の勤務で住宅ローン相談実績1500件以上、多重債務救済対応、延滞債権の管理回収対応も担当し、個人融資の入口から出口までの業務すべてを経験。不動産業界に転職後、売買仲介を経験後、中古物件の買取再販や建売住宅の企画販売などを担当。現在は不動産会社としては2社目で売買仲介をメインに担当。

相続不動産は“値下げしてでも”早く売るべき理由

相続不動産は“早く・安く”売った方が得?


相続不動産は“早く・安く”売った方が得?
税金優遇を最大限活用するための合理的判断

相続した不動産を「高く売るか」「早く売るか」で悩まれる方は非常に多いものです。 中には「せっかく親が残してくれたものだから」「もう少し価格が上がるのを待とう」と考えて、売却を後回しにしてしまう方もいます。

しかし、相続不動産の売却には“税金優遇”という期限付きの大きなメリットが存在します。 この制度を活かせば、たとえ市場価格より多少安く売却しても、結果的には「手取り額が多くなる」というケースも少なくありません。

本稿では、相続不動産の売却に関して、なぜ“値下げしてでも売り切るべき”なのか、その理由を税制面から詳しく解説します。

1. 相続不動産にかかる3つの税金

相続した不動産を売却する際に関係してくる主な税金は以下の3つです。

  • 相続税:相続財産に対してかかる税金。相続発生から10ヶ月以内に申告・納付が必要。
  • 譲渡所得税:不動産を売却した際の利益(譲渡所得)にかかる税金。
  • 住民税・復興特別所得税:譲渡所得に連動してかかる。

中でも重要なのが譲渡所得税です。取得費が不明な場合、思わぬ高額課税が発生することもあります。

2. 税金優遇「取得費加算の特例」とは?

相続不動産の売却には、「取得費加算の特例」と呼ばれる税制優遇があります。これは、 相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。

譲渡所得が少なく計算され、譲渡所得税が大幅に軽減されます。以下はその簡単な例です。

例:
・相続税として500万円納付
・取得費不明のため概算150万円(5%)
・売却価格:3,000万円

通常:
3,000万円 - 150万円 = 2,850万円の譲渡所得 → 税金 約850万円

特例適用後:
3,000万円 - (150万+500万)= 2,350万円 → 税金 約700万円

約150万円の節税効果

3. 「取得費加算の特例」は3年以内に売却が条件

この特例は相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から3年以内に売却した場合に限り適用されます。

この期限を過ぎると特例は無効となり、納めた相続税は取得費に反映されません。つまり、節税チャンスを逃すことになります。

4. 値下げしてでも早く売るべき理由

不動産は「高く売りたい」が当然の心理。しかし、3年以内に売れなければ、節税額が消え、手取りが大きく下がります。

100〜300万円値下げしてでも、特例期間内に売却した方が、最終的な手取りが多くなる可能性が高いのです。

  • 相場よりやや安めの価格設定
  • 複数業者への依頼(一般媒介)
  • 内覧や広告への積極協力

5. 空き家の3,000万円特別控除も併用可能

さらに、被相続人の住まいだった空き家に関しては、条件を満たせば最大3,000万円の譲渡所得控除も使えます。

こちらも期間・建物の条件など複雑なルールがあるため、事前に専門家への相談が重要です。

6. まとめ:相続不動産は“期限”との戦い

相続不動産は「大切な家を高く売りたい」と思う反面、税制優遇には明確な期限があるため、冷静な判断が必要です。

特例を使えば数百万円の節税が可能。多少の値下げより早期売却による手取り最大化を目指すことが賢明です。

相続不動産を所有されている方は、ぜひ一度「早めの売却」を前提にシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。

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